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■ メールマガジン・・・・・・・バックナンバー第020号
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・・・これからの住宅設計・・・ 第020号(2007.08.23)
建築設計者の立場から住宅を考えるヒントを提供します。
published by commonplace studio
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「これからの住宅設計」は戸建住宅や集合住宅(マンション)またそれらの改
修等、生活空間を作ること全般を題材にして、設計者の視点から住宅の在り方
を、読者の方々と一緒に考えてゆくメールマガジンです。
建築設計、住宅設計に関わる話題を取り上げ、住宅設計者としての経験や理念
をお話することにより、家創りについて違った視線で考える機会を提供するこ
とを目指しています。
読者の方々が住宅を設計する過程に触れることにより、家創りについて何か新
しいことを発見していただければ幸いです。
コモンプレイス スタジオ
代表 池澤 雅弘
※バックナンバーは下記ホームページでも御覧いただけます。
誤字等も含めて、記事の訂正が必要な場合は、ホームページ上で修正させて
いただいています。
http://www.commonplace.jp/
■目次
01 今週のコラム--------------「自分にとって良い住宅とは」
02 住宅設計入門--------------No.20 天井の高さについて
03 マンションの完成まで------No.20 工事監理-仕上工事(共用部分)
04 師の言葉------------------心に残った建築に関わる言葉
///// 01 今週のコラム //////
「自分にとって良い住宅とは」
テレビで「お宅拝見」や「掘り出し物件情報」などの番組を見ていると、紹介
されている住宅が全ての人にとって価値の高い住宅であるような表現をしてい
ることが多いと思います。もちろん感心させられる作品も多いので参考なるこ
ともありますが、テレビを観ている側は、最強のメディアから発せられる情報
の圧倒的な説得力により、何の疑問も感じず受け入れてしまうことも少なくな
いと思います。ただ少しさめた目で見ると、本当にそれが自分にとって良い住
宅なのか多くの疑問を感じることがあります。
情報が氾濫する時代に、自分にとって理想的な住宅とはどんな住宅であるか試
行錯誤を続ける必要があると思います。多くの方は理想的な住宅を想像の中で
しか持っていなくて、なんとなく廻りが良いといっている住宅を理想にしてし
まう傾向があるような気がします。それが本人にとって気付かなかった理想を
探し当てたということなら問題は無いのですが、たとえば日常的にはシャワー
しか使っていない人が、開放感のある大きな浴室に一時的な憧れを持ってしま
い、実際に生活を始めてから持て余すというようなことは少なくないと思いま
す。
テレビの物件情報ではタレントが紹介していて、専門家は余り出てきません。
出て来たとしても紹介されている物件を悪く言う人はいないと思われます。常
に人目を引く話題を取り上げ、最大公約数的な情報を流していく傾向がありま
す。住宅の価値は多様で人それぞれ違います。実際に家を建てたり、購入した
りしようと検討されている方は少し厳しく番組を観てほしいと思います。重箱
の隅をつつき、揚げ足を取るぐらいの意識を持って丁度良いのではないでしょ
うか。それでもピンとくるものであればどこが気に入ったか記憶し、積重ねて
行けば具体像が出来上がってくると思います。
建築専門誌では多くの作品が紹介されていますが、それをたよりに実際に建築
を見に行くと写真の方が断然良くがっかりすることがあります。逆に細部まで
行き届いた設計にじかに触れて感動することもあります。雑誌を見ても涙が出
ることはありませんが、実際に見ると目頭が熱くなってしまう建築もありまし
た。メディア受けするかしないかは関係なく、その空間を体感することが大切
だと思います。
最近、赤い屋根の家を余り見かけません。昔は屋根を目立つ色で塗ることが多
かったと思います。それは住宅に対する嬉々とした思いを感じます。情報に左
右されず自分が良いと思ったものを大切にし、そこで生活をする喜びが表れて
いたような気がします。今の時代そんな素直な感情を呼び戻す必要があるので
はないでしょうか。
///// 02 住宅設計入門 //////
ここでは、一般の方を対象に毎回テーマを決めて建築設計に関するアドバイス
をさせていただきます。
第20回のテーマは「天井の高さについて」
マンションを設計するとき殆どの場合、ディベロッパーから天井高さを指定さ
れます。参考までに一般的な数値を紹介させていただくと、LD:2500から2600
(ミリ 以後この記事において共通) 洋室:2500 和室:2500 キッチン:
2200または2400 便所:2200 洗面所:2200 廊下:2200となります。この数
値を確保した上で、一部梁型や排気ダクト用の下がり天井が出てきます。マン
ションの場合、階高が2900程度であるため自然に天井高が決まってきます。廊
下や水廻りの天井が低いのは、排気ダクトや換気扇を納めるためです。またシ
ステムキッチンなどが納めやすい高さでもあります。最上階が勾配屋根になっ
ていたりすると天井高が高く取れますので、なるべく高くとるようにします。
ただし便所や廊下、洗面所の天井高は一般階と同じにすることが多いと思いま
す。
マンションの設計を長くしていると、戸建住宅を設計したとき天井高を決める
ときに戸惑うことがあります。高さ関係の設定が自由なのでどこまで高くする
か考えてしまうからです。天井高は高い方が気持ちよく、2階からの影響も少
なくなるのでなるべく高くしたいところですが、冷暖房の効率が悪くなったり
照明の設置に工夫が必要になったりするので多くの要素を総合的に考えて判断
しなければなりません。
キッチンは許されれば紹介したマンションの基準よりも天井を高くした方が良
いと思います。洗面所、便所は天井を高くする必要は無いと思いますが、サニ
タリールームとして空間を充実させるために、高窓を設け天井を高くしても面
白いかも知れません。
和室に関しては洋風の住宅に1室きちんとした和室を設ける場合は、日常的に
床に座った姿勢の視線を意識して天井や開口を余り高くしないほうが空間的に
落ち着きます。天井高は2300から2400程度にして、障子、襖の高さも1800が妥
当だと思います。開口を大きくする場合は欄間や天袋を設けます。ただし所謂
和風住宅で、家の殆どの部屋が和室の場合は天井が高い方が良い場合もありま
す。特に面積が大きい部屋は天井を高くするべきです。
マンションの場合和室の開口高さも他の木製建具にあわせるので、開口を2000
から2100程度の高さにしていることが多いです。天井の高さも洋室と同じにし
ます。大味な和室になりますが、LDに隣接した和室風の部屋と割り切れば、生
真面目な和室を置くよりも違和感がありません。
廊下に関しては、どの様な機能を持たせるかによって違ってきます。ホールの
ような空間であれば天井を高くした方がよいでしょう。また廊下を抜けて、居
室に入ったとき空間が広く感じるように、敢て廊下の天井を低くして空間を引
き締めることもあります。廊下の天井高を決めるときは、その部分だけで完結
せずに他の空間との連続性を考える必要があります。
天井の高さは、空間に思わぬ変化をもたらします。日常的に意識していればど
の程度の高さが自分の理想に近いか感覚的に解かってくると思います。
///// 03 マンションの完成まで //////
マンション設計の依頼から竣工にいたる出来事を、設計事務所の立場から紹介
させていただきます。マンションはどうやってできるのか、どれだけの作業が
必要なのかご理解いただければ幸いです。
No20 「工事監理-仕上工事(共用部分)」
共用部分の仕上は、足場をなるべく早く撤去する必要性から外壁タイル工事が
先行します。タイルは色を特注で作ってもらうことが多く、製造に時間がかか
ります。以前検査を手伝った現場でタイルの枚数が足りなくなり、追加のタイ
ルが出来るまで数週間作業が中断し足場を外すことが出来ない現場がありまし
た。足場が外せないと、外構工事に手が付けられないので工程に大きな影響を
及ぼします。タイルはある程度余裕を持って枚数を確保しておくことが大切で
す。
タイル割りに従って施工を進めますが、コンクリートの打設が悪いとタイル面
に下地の凸凹が仕上面に出て来るので注意が必要です。ひどい場合は左官処理
を行ってもらうことがあります。また最近は意匠的に貼付けパターンが複雑に
なっていて、確実に指示が伝わっていないと間違って施工してしまうことがあ
ります。同じパターンでどんどん貼り続けてしまいますので、注意深く現場を
見て間違いを見つけた迅速に指示をすることが大切です。目地埋めも仕様に従
ってきちんと施工できていないと、剥落に繋がるので注意しなければいけませ
ん。
共用廊下部分は勾配がゆるく、形状も複雑になることが多く、水溜りが出来や
すいので水勾配が正確に取れているか確認します。特にエレベーター周辺はエ
レベーターシャフト側に水が行かないようにする為、逆勾配になり注意が必要
です。また通常エアコンの室外機を共用廊下側に置いていますが、ここから発
生する排水は深さ数ミリの溝を流し廊下を横断して廊下先端の排水溝まで流れ
るようにします。エアコン排水用の溝は深さが浅いので少しでも転がると廊下
に水が流れてしまい調整が難しい部分です。
エントランスホール廻りは、マンションの中でも一番意匠的に重要な部分で床
や壁に石を使ったり、天井を折上げ天井にして間接照明を使ったり、カウンタ
ーを複雑な形状に仕上たりするので多くの作業が入り混じりとても手間がかか
る部分です。天井工事については設備関係の配管が集中しやすい部分でもあり
、設計図通りに施工が進まないことがよくあります。設計事務所は意匠的に大
きな変更が生じないように、設備工事と建築工事を上手く調整します。
最近のマンションはエントランスホールのデザインに力をいれていて、硝子パ
ネルや筒状の特殊タイル等を使用するようになり、材料の管理や細部の納まり
も難しくなってきています。それだけディベロッパーの意識も集中する部分な
ので神経を使います。
住戸部分と違い、共用部分は入居者の目に触れ難い部分が多いので入居者に代
わってしっかり確認する意識が必要です。タイル工事が終わり足場が外れると
、外観が現れることにより興味を引きモデルルームを訪れる方も増えると聞き
ます。いよいよ完成が近づきました。
次回は植栽、外構工事を紹介させていただきます。
///// 04 師の言葉 /////
私が実際に接した建築家や書籍のなかで印象に残った言葉を紹介させていただ
きます。
「わかっいるようでわかっていないことが沢山ある」
この言葉は学生時代、鉄筋コンクリート構造を研究している先生からいわれた
言葉です。世の中ではどの位の力を加えれば建物が壊れるかわかっているよう
に伝えられているが、実はわかっていることは一部だけで、壊れる過程におけ
る細かいことは殆どわかっていないと話されていました。
当時に比べ今はどの位研究が進み、どの程度解明されているか詳しいことはわ
かりませんが一般的な低層、中高層建築における画期的な解析方法が開発され
た話は聞いていません。日本の建築構造に関する安全性のかなりの部分は建築
基準法によって確保されています。法律であるから当然ですが、「この数値以
上であれば可、以下であれば不可」と記載され「この数値以上であれば安全、
以下であれば危険」という断定的な印象を受けます。しかし実際は安全を保障
されたものではありません。未知の部分がある以上、多くの条件が関係すれば
基準値以上であっても壊れることもあるし、基準値以下の建物が確実に壊れる
こともありません。ただ法として最低基準を決めて危険が少ない方向へ世の中
を導いているのです。
建築基準法が無い時代は大工の勘に頼って建物は造られていました。その頃に
比べて飛躍的に耐震性能は向上していると思います。しかしそれが絶対的に安
全かどうかは誰にもわからないと思います。法律に則って建物が壊れたとして
も誰も責任を取ってくれません。法の適合性を持って建物の安全性性を強調す
る建築関係者が沢山いますが、過信は禁物だと思います。家を建てるときは経
済的状況を考慮した上、納得できる構造を考えるべきでしょう。
世の中にわかっているように伝わっていることは実は余りわかっていないこと
があり、そこに多くの危険性を感じてしまいます。経済行為を優先するばかり
でなく、自然化科学に対する謙虚な気持ちが無ければ先が見えてこないと思い
ます。わかっていないことを理解した上で、自分の努力を積み重ねていく大切
さを教わった言葉です。
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■コモンプレイス スタジオは建築士事務所です。
住宅の設計依頼は勿論、設計事務所の敷居が高く感じているお客さまに対し
てメニューを用意しています。
1.お客様が書いたスケッチから設計図を作ります。工務店に設計施工を任せて
しまう場合図面があるとお客さまの意図が明確に伝わり、自分の理想に近い
形で家創りが進められます。
2.工務店に全てを任せてしまうと工事が進むうちに不安になることや、疑問点
が出てくると思います。そのような場合のアドバイスを行います。
3.マンション購入の際、フリープラン等のオプションがある場合に図面を作成
し、お客様の理想に近い空間を作るお手伝いをします。
その他、誠心誠意をモットーに豊かな日常空間と建築文化の創造を目指してお
りますので是非ホームページをご覧ください。
http://www.commonplace.jp/
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【発 行】コモンプレイス スタジオ commonplace studio
【編 集】池澤 雅弘 masahiro ikezawa
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