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世の中には無数の建築物があり、それぞれの日常を包み込んでいます。日常の中には空間があり時間が存在します。長い年月が経過する中、その空間で多くのことが起き多くことに心が動かされるでしょう。その心の動き一つ一つを受容できるような空間を創ることが私の理想です。少し観念的になってしまいましたが、空間あっての日常ではなく、日常あっての空間であるべきだということです。ご依頼主からのお話を出来るだけ沢山伺い、そこから空間を組み立てていくことを理想とします。生活の事象全てを個々に取り上げることは出来ませんが、それらを効果的に包括する手法を導き出し全体をまとめます。形状はシンプルであってもご依頼主との対話から生まれた課題を実現するため、アイディアを提案してディテールを重視し将来に向かい生命力を維持する住宅を創ります。また室の構成、窓の配置、素材感のコントラスト等建築が本来持ちうるモチーフを生かし内部空間と外部空間の関連性を重視しまとめて行きます。
上記は私の理想ですが、このようなことを常に心に秘めながら設計を続けてきました。いろいろな事情で思い通りに行かないことがよくあります。それはこれからも同じだと思います。私は「この理念に従った設計しか出来ません」とは言いません。そのような仕事であっても、こちらの気の持ち方によって必ず何パーセントかは思い通りに出来た部分があります。施主が設計者に期待することは、意匠、技術、信頼、他様々です。あなたのデザインは嫌いだけど責任感を買って発注する、という施主がいても全然不思議ではありません。私も信頼していただけるなら喜んでお力になりたいと思います。ただ「私の理念に共感して頂いたご依頼主の方が、よりよい効果が期待できる」ということだと思います。
私の設計理念を展開する上で、もっともよいスタディになるのがご依頼主と対話を重ねながら手を動かし図面を描くことです。心の中に思っていることを形にするのは大変難しいことです。ぼんやりと見えてきたら手を加えアイディアを注入し試行錯誤を重ねながら形にして行きます。その先に設計作業が見えてきます。形や手法は先に存在するのではなく、対話や思考から導き出されるるものだと思います。 |