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■ メールマガジン・・・・・・・バックナンバー第012号
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・・・これからの住宅設計・・・ 第012号(2007.06.18)
建築設計者の立場から住宅を考えるヒントを提供します。
published by commonplace studio
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---------住宅間取り図の無料チェック始めました。
ホームページをご覧ください。------------
「これからの住宅設計」は戸建住宅や集合住宅(マンション)またそれらの改
修等、生活空間を作ること全般を題材にして、設計者の視点から住宅の在り方
を、読者の方々と一緒に考えてゆくメールマガジンです。
建築設計、住宅設計に関わる話題を取り上げ、住宅設計者としての経験や理念
をお話することにより、家創りについて違った視線で考える機会を提供するこ
とを目指しています。
読者の方々が住宅を設計する過程に触れることにより、家創りについて何か新
しいことを発見していただければ幸いです。
コモンプレイス スタジオ
代表 池澤 雅弘
※バックナンバーは下記ホームページでも御覧いただけます。
誤字等も含めて、記事の訂正が必要な場合は、ホームページ上で修正させて
いただいています。
http://www.commonplace.jp/
■目次
01 今週のコラム--------------戸建住宅の免震構造と制震構造
02 住宅設計入門--------------No.12 アプローチを考える
03 マンションの完成まで------No.12 工事の着工
04 建築の本棚----------------建築の本の紹介
05 師の言葉------------------心に残った建築に関わる言葉
///// 01 今週のコラム //////
「戸建住宅の免震構造と制震構造」
大地震から身を守る手段はいろいろ論じられていますが、ある意味で家の中で
じっとしていることが一番安全ということが究極の方法かも知れません。免震
構造はそれを実現できる可能性を抱かせてくれます。まだ普及の途中で、現実
に巨大地震に直面したとき改良点が見つかると思いますが、期待の持てる方法
です。
免震構造とは基礎部分とその上部を構造的に切り離し、地面の振動を生活空間
に伝えない方法です。詳しくは免震装置を製作しているオイレス工業のホーム
ページを御覧ください。免震構造を導入すれば、建物の倒壊ばかりではなく揺
れも少なくすることが出来るので、家具や電化製品の転倒による破壊、(過信
は危険ですが)それによる人命の危機を避けることが出来ます。また基礎より
上部は地震による変形が殆ど発生しないので、建物自体の損傷も起こりにくい
です。
問題点とすれば、免震装置自体や施工手間の費用は当然ですが、免震装置を有
効に設置するために、基礎を通常より丈夫に作らないといけないのでコストア
ップになります。また敷地に免震層の移動を許容する余裕が必要となります。
個人的に心配な点を加えると、大地震の際想定外の縦揺れが起きたとき免震装
置が外れることが無いか気になります。また基礎の陥没転倒などにどこまで対
応しているか解からない部分があます。
一方、制震構造は地震により強い負荷を受ける構造部材に制震装置を取り付け
ることにより、急激な負荷が加わらないようにして、損壊を防ぐ方法です。制
震装置はオイルダンパー等が用いられ、壁の中に隠れてしまいますので見た目
は普通の建物と変りありません。設計時点で制震装置を交換できるようにして
おけば、大地震が発生した後も制震装置を点検交換することで継続使用が可能
になります。制震装置については下記ホームページを参考にしてください。
制震構造は地震時に接合部の変形を抑える効果はありますが、揺れに対して免
震構造ほど効果的ではありません。そのため大地震時に建物の損傷が発生する
可能性はあります。しかしイニシャルコスト的には免震構造より有利であり、
導入の自由度もあるようです。また注目したいのは既存の建物の耐震補強とし
て利用されている点です。
一生に一度体験するかどうかわからない、巨大地震に対してどれだけ配慮する
か個人個人差があるところです。素晴らしい技術だと思いますが、今までの耐
震構造でもしっかり計画すれば大地震に対応できると思いますので、導入の際
には長所、短所をよく検討していただきたいと思います。
オイレス工業株式会社(免震装置)
http://www.oiles.co.jp/residence/menshin/index.html
株式会社 日立製作所(制震装置:減震くん)
http://www.tokico-giken.co.jp/tokico/genshin/genshin.htm
///// 02 住宅設計入門 //////
ここでは、一般の方を対象に毎回テーマを決めて建築設計に関するアドバイス
をさせていただきます。
第12回のテーマは「アプローチを考える」
住宅の間取りを考えるとき、最初に玄関の位置を決めることが多いのではない
でしょうか。特に制約が無ければ道路に面した場所に玄関を配置することを考
えると思いますが、少し奥まった位置に玄関をもって行き、道路から玄関まで
のアプローチを楽しむことも生活に彩りを加えます。また玄関の配置に自由度
が生まれるため、建物全体の構成も豊かになる可能性が出てきます。
玄関までのアプローチは、独特な空気が漂います。客人にとっては緊張感を伴
う空間になるかもしれないし、そこに住む人にとっては安心感を伴う場所かも
しれません。店舗やレストランなどでは開口(ガラス面)を広く道路側に取り
、入口は少し奥まったところに配置することがあります。気軽に入り難い印象
を持つかもしれませんが、アプローチを通る多少の緊張感が商品や料理の価値
を高めていると思います。
石畳を敷き、植栽等で演出しそこを通る人が何かを感じる空間を創ることが大
切です。幅は傘を持って歩いても問題がない程度の幅が必要です。また道路か
ら見て、自然に玄関へのアプローチへ導き入れるように門や塀を配置しましょ
う。言葉で表現しただけではお解り難いと思いますので、昔からある住宅街を
歩いて見ることをお勧めします。必ず心を捉えるアプローチを用意している住
宅があるはずです。
限られた敷地の中で創るアプローチは、庭の要素も兼ねます。プライベートな
庭に対してパブリックな庭と言えるでしょう。この要素を住宅に持ち込むかど
うかで日常の生活にも変化を与えます。それに何かを期待できる方は、是非玄
関へのアプローチを創っていただきたいと思います。
///// 03 マンションの完成まで //////
マンション設計の依頼から竣工にいたる出来事を、設計事務所の立場から紹介
させていただきます。マンションはどうやってできるのか、どれだけの作業が
必要なのかご理解いただければ幸いです。
No12 「工事の着工」
マンション販売の準備も整いよいよ着工となりますが、着工前に解決しておか
なければならないことがあります。建設業者が決定した時点では、まだ請負契
約は完了していません。多くの場合、条件付で建設業者が決められていて、機
能、満足度を買えずにコストを抑える手法(バリューエンジニアリング:VE)
の検討をして建設業者が利益が望める条件になった状況で正式に請負契約を行
います。設計を見直し、効率の良い材料、工法の検討を行いますが、なかなか
目標の数値に届きません。時間的な制約もあるので、やや不満を残したまま契
約に至ることも多いようです。「現場が始まってから調整すれば何とかなるだ
ろう」という見通しを立てると現場所長は苦労を強いられます。設計事務所は
VEを行うと、設計図も修正しなければなりません。請負契約には図面も添付し
ますので、変更が多いと結構な作業量になります。
住宅性能評価を取得する場合、着工前に設計事務所は設計性能評価を取得しな
ければなりません。設計性能評価の後、実際に建設された建物に対して建設性
能評価を取得することになるのですが、検査機関は設計評価通りに建設されて
いるかどうかを検査して建設評価を与えることになります。したがって着工前
に設計性能評価が取得されていないと、着工時に検査対象が存在しないことに
なり、最終目標である建設性能評価を取得できなくなってしまいます。建物全
体の評価書と別に、全ての住戸一つ一つで温熱、劣化、音、維持管理等の等級
の認可を受け評価書を取得しなければならないので、大変な作業になります。
住宅性能評価(住宅性能表示制度)について詳しくは下記のホームページを参
考にしてください。
請負契約が完了したらいよいよ建設業者が現場に乗り込みます。最初に現場事
務所を設置しなければなりませんが、都内のマンション現場では敷地に対する
建物の割合が高く、敷地内に現場事務所を建てられないことよくあります。近
くのアパートやマンションを借りて現場事務所とするケースが多く、まれに空
き地が見つかればそこにプレハブの現場事務所を建てます。
敷地に地縄を張り(建物の配置を決定することです)地鎮祭を行い工事を始め
る準備は整います。その後杭を打ちますが、正式な着工日は杭を打ち始めた日
を指すことが多いようです。最初に、支持地盤の確認や杭の施工方法を確認す
るため試験杭を打ち込みます。設計事務所は試験杭施工に立ち会いますが、私
はこのとき現場が始まったことを実感します。
杭打ちまでは、忙しく現場は動きますが、その後しばらく落ち着きます。マン
ションの施工は振動や騒音で近隣に迷惑をかけないように、現場打ち杭といっ
て、大きな穴を開けてそこに鉄筋かご入れてコンクリートを打ち込む方法を取
ります。現場で杭そのものを作るやり方です。直径1メートル位の杭を支持地
盤まで数十メートル打ち込むので大量のコンクリートを使います。これを柱の
数位の本数打ちますから相当時間が掛かります。その間にその後の工事の段取
りをするのが一般的で、基礎の配筋の検討、施工図の作成もこの期間に行いま
す。
次回から数回に渡り、工事現場監理を紹介させていただきます。
住まいの情報発信局:住宅性能表示制度
http://www.sumai-info.jp/seino/index.html
///// 04 建築の本棚 /////
建築に関わる仕事をしている以外の方でも、楽しんでいただける建築関係の本
を選んで紹介させていただきます。
今回紹介させていただく本は
「15分スケッチのすすめ」
山田雅夫 著
山海堂 1400円+税
この本の著者は画家ではなく、都市計画家です。それだけに表現技法について
独特のスタンスがあります。その特徴を生かし、15分程度で生き生きとしたス
ピード感のある線でスケッチを描くコツを教えてくれます。基本的に下書き無
でいきなりペンで描きだす方法ですが、どの線から描き始めるのか、細い線太
い線の描き分け方、曲面の描き方、など丁寧に解説されています。
省略の手法も巧みで、遠景の省略や瓦屋根などのディテールの省略の仕方を解
かりやすく教えてくれています。著者が描いた絵の特徴に、一場面が一枚の絵
だけで完結せずに、そのバックグラウンドを感じさせる絵になっている印象を
受けます。これは省略の仕方がその先を予感させる効果を生み出しているから
だと思います。著者が都市計画家であることと関係があるのではないでしょう
か。短時間で線を選択して描くことは、その場の空気を捕らえて見えない部分
を描くことに役立っています。あとがきで著者は「15分スケッチは線というと
ても人工的な表現手段を用いて、モノとモノの関係性(空間性)をさらりとそ
の場で描く画法です」と述べています。私が最初にこの本を手にした時の印象
を、巧みに表現した文章だと思いました。
「15分スケッチのすすめ」はシリーズ化され現在までに本書の他に、「懐かし
の和の風景を描く」「風景の中の人物を描くコツ」「絵になる場所探しとアン
グル」の合計4冊が出版されています。
///// 05 師の言葉 /////
私が実際に接した建築家や書籍のなかで印象に残った言葉を紹介させていただ
きます。
「細部が納まらなければ全体を納めることはできない」
この言葉は私がお世話になった、建築家小野正弘先生の言葉です。小野先生と
中学校の設計の仕事をしたときに、大体のプランが決定した時点で、先生は猛
然と50分の1の詳細図を描き始めました。まだ一般図(1/200の全体図)も完成
していない時点だったので少し驚きました。そして描いた詳細図を所員に見せ
ながら問題点を指摘して、一般図を作成するやり方で設計を進めて行きます。
厳しいスケジュールの中で仕事をしていて、確認申請を提出しなければいけな
い時期だったので、出来れば先行して一般図を形にしたいのですが、殆ど全て
の部分の詳細図を描き終るまで一般図は完成しません。不安に思う空気を感じ
取って先生は「細部が納まらなければ全体を納めることはできない」とおっし
ゃいました。
あるコンセプトにしたがって、整然と整理された空間は美しいですが、解決さ
れてない部分が片隅に残ると、空間の価値は急激に下がってしまいます。建築
の面白いところで、比較的自由に空間を装飾しているような作品でも、細部を
きちんと納めいると圧倒的な説得力をもって人を感動させます。そしてストイ
ックでシンプルなデザインの作品は、隙があっては空間全体が台無しになって
しまいます。その怖さを小野先生は知り尽くしていたのだと思います。
組織事務所は一般図を一度完成させてから、その後細部を分担して詳細を決め
ていきます。そして調整が必要になった時点で、一般図に訂正を加えて行きま
す。全体的に少しずつ完成度を上げて行くやり方で、人海戦術が可能な場合は
そのほうが合理的かもしれません。しかし所員数人のアトリエ事務所で、厳し
いスケジュールで完成度の高い作品残して行くには、小野先生のやり方が一番
合理的だったと思います。建築家としての創造力のみならず、達観した職人芸
を持ち合わせた先生の能力に圧倒されました。
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■コモンプレイス スタジオは建築士事務所です。
住宅の設計依頼は勿論、設計事務所の敷居が高く感じているお客さまに対し
てメニューを用意しています。
1.お客様が書いたスケッチから設計図を作ります。工務店に設計施工を任せて
しまう場合図面があるとお客さまの意図が明確に伝わり、自分の理想に近い
形で家創りが進められます。
2.工務店に全てを任せてしまうと工事が進むうちに不安になることや、疑問点
が出てくると思います。そのような場合のアドバイスを行います。
3.マンション購入の際、フリープラン等のオプションがある場合に図面を作成
し、お客様の理想に近い空間を作るお手伝いをします。
その他、誠心誠意をモットーに豊かな日常空間と建築文化の創造を目指してお
りますので是非ホームページをご覧ください。
http://www.commonplace.jp/
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【発 行】コモンプレイス スタジオ commonplace studio
【編 集】池澤 雅弘 masahiro ikezawa
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Copyright(C)2007 commonplace studio ALL Rights Reserved.
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