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『これからの住宅設計』(ID:0000230971) 読者登録解除フォーム
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■ メールマガジン
・・・・・・・バックナンバー第015号

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  ・・・これからの住宅設計・・・      第015号(2007.07.10)

   建築設計者の立場から住宅を考えるヒントを提供します。
                published by commonplace studio
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----都合により次週は休刊にさせていただきます。申し訳ございません。----
        次号、第016号は7月24日発行予定です。
        

「これからの住宅設計」は戸建住宅や集合住宅(マンション)またそれらの改
修等、生活空間を作ること全般を題材にして、設計者の視点から住宅の在り方
を、読者の方々と一緒に考えてゆくメールマガジンです。

建築設計、住宅設計に関わる話題を取り上げ、住宅設計者としての経験や理念
をお話することにより、家創りについて違った視線で考える機会を提供するこ
とを目指しています。

読者の方々が住宅を設計する過程に触れることにより、家創りについて何か新
しいことを発見していただければ幸いです。



                        コモンプレイス スタジオ
                          代表  池澤 雅弘


※バックナンバーは下記ホームページでも御覧いただけます。
 誤字等も含めて、記事の訂正が必要な場合は、ホームページ上で修正させて
 いただいています。

                      http://www.commonplace.jp/


■目次

 01 今週のコラム--------------断熱塗料について
 02 住宅設計入門--------------No.15 傾斜地の生かし方
 03 マンションの完成まで------No.15 工事監理-配筋検査他
 04 建築の本棚----------------建築の本の紹介
 05 師の言葉------------------心に残った建築に関わる言葉



///// 01 今週のコラム //////


「断熱塗料について」

住宅の断熱性能を高めようと思うと、内装の壁をはがし断熱材を取付けたり、
外壁に断熱パネルを設置することを考えますが、どちらも大変な工事になって
しまいます。もっと手軽な方法は無いものかと思っていたところ、最近かなり
性能が良い断熱塗料が実用されていて評判が高まっているそうです。

株式会社 日進産業の「シスタコート」は高性能の断熱塗料で、外壁や屋根に
塗るだけでかなりの効果があり、消臭効果や防音効果も実証されていることが
公開されています。また新製品「ガイナ」は宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロ
ケットに使用されている塗料を、住宅用に開発した製品でさらに高性能になっ
ています。

シスタコートの構造は、塗料に含まれているセラミックビーズという20から40
ミクロンのセラミックが被膜層を創り、熱や音、紫外線等を遮断し多くの効果
が発揮されるということです。その効果は「12マジック」としてホームページ
に紹介されています。(下記ホームページ参照)

シスタコートは平成12年より開発製造されていたそうですが、開発会社の規模
が小さかったこともあり、余り世間に知られることは無かったようです。とこ
ろが宇宙航空研究開発機構とライセンス契約を結ぶようになって、世間の認識
度が一気に高まりました。

建築の設計をしている立場から言わせていただくと、その効果が一般のマンシ
ョンで使われている断熱材、ウレタンフォームを凌ぐとすれば画期的な製品で
す。苦労して施工をしている現場を見続けているので信じられない部分もあり
ます。将来、住宅性能評価の認定工法等に認められれば、施工現場に大きな変
革をもたらすでしょう。

今のところ施工例はリフォームが中心で、新築の建物には余り導入されていな
いようです。しかし知名度も上がり、これからどの様な動きがあるか注目して
います。ただ、製造提供元の日進産業では、これ以上業績を伸ばすと施工品質
の低下に繋がると判断して広告活動を控えているようです。利益より品質の飽
くなき追求を感じさせる企業なので、大衆産業的な建築業界からハイテク産業
に移行していくかも知れません。


株式会社 日進産業:シスタコート
http://www.nissin-sangyo.jp/sista/index.html





///// 02 住宅設計入門 //////

ここでは、一般の方を対象に毎回テーマを決めて建築設計に関するアドバイス
をさせていただきます。

第15回のテーマは「傾斜地の生かし方」

住宅の敷地は平に整地されているイメージをもたれる方が多いと思いますが、
実際は勾配がかなりあったり、段差があったり、崖を背負っていたりする場合
がかなりあります。このような敷地をお持ちの方は、条件が悪いと悲しむより
も条件を生かし自然になじむ住宅を是非創っていただきたいと思います。

傾斜地の利点は第一に自然との接点が多いということです。斜面は日当たりが
よく、既存樹木が多く残っているケースがあり、住宅の側面を緑で囲むことが
可能です。外観的にも正面から既存樹木や、後から植えた植栽が重なって見え
るので奥行きのある景観が形成されます。それを生かす住宅は斜面に沿った床
レベルを設定したいものです。そのために天井の高い部屋を用意して、他の部
屋の床を少しずつ上げていっても天井高に問題がないようにします。レベル差
による変化ある屋内空間を楽しむことが出来ます。お年寄りの方には不評かも
しれませんが、中途半端な段差よりもしっかり段差のある階段があった方が安
全です。敷地手前側に天井の高い居間を用意すれば、採光条件も風通しも良く
なると思います。外構も床レベルとの関係を重視し、違うレベルから外に出ら
れるようにすると面白い外部空間が出来ると思います。

次の利点として、傾斜地はなだらかに続いていることが多いので周囲の状況に
邪魔されない眺望が得られることです。床レベルを敷地に合わせている関係か
ら、2階の窓の高さは通常の住宅より高く、条件はさらに良くなっています。
2階をセットバックして広いバルコニーを用意したいところです。

最後に、傾斜地はプライバシーを維持し易いということです。崖を背負ってい
る場合、ドライエリア(採光用空掘)を作って半地下空間を創ることが出来ま
す。マンションでは法定容積率の関係からよく地下に住戸をつくりますが、外
部環境から遮断された空間は人気があります。注意しなければいけないことは
、地下の土に接する部分は水が回りますので、二重壁にするなど防水対策が必
要です。正面は開放的で、背面は閉鎖的な空間を用意できるのは傾斜地の特徴
といえます。

傾斜地を利用する場合、安全性を確保したり、建物の構造も複雑になるので工
事費は平坦な敷地に比べると高くなると思います。ただ斜面地の利点を生かせ
ば、その土地でなければ出来ない住宅を創ることが出来るので、積極的に挑戦
してほしいと思います。





///// 03 マンションの完成まで //////

マンション設計の依頼から竣工にいたる出来事を、設計事務所の立場から紹介
させていただきます。マンションはどうやってできるのか、どれだけの作業が
必要なのかご理解いただければ幸いです。


   No15 「工事監理-配筋検査他」

掘削工事が完了すると、杭頭処理といって1メートルぐらい杭の頭のコンクリ
ートをはつり取り、鉄筋をむき出しにします。この鉄筋が基礎の中に入って建
物と杭が一体になります。その後、苦労して作成した基礎の施工図に従って配
筋工事に入りますが、基礎の配筋は複雑で時間もかかりますので、その間に建
物本体となるコンクリートの配合を決める作業を行います。

コンクリートの強度等の仕様は設計図に指示していますが、その条件に合った
コンクリートの配合は、コンクリート生産業者と建設会社が決めて配合計画書
を作成し、それを設計事務所が確認することになります。その後、試験練を行
い配合通りのコンクリートを作り強度を確認します。配合や強度の試験に立会
うのも設計事務所の大切な仕事です。

水セメント比という基準があって、最大65パーセント以下という決まりがあり
ます。セメントに対する水の重量比で、数値が少ないほうが強度も強くなり、
耐久性も良くなります。マンションでは金融公庫の基準や住宅性能評価の等級
確保の為、55パーセント以下に指定することが多いです。ただそのために調合
の関係で、単位水量という基準が最大値の185キログラム/立方メートルとなっ
てしまうことがよくあります。単位水量はコンクリート1立方メートルの水の
量で、少ないほうが乾燥収縮に拠るひび割れ等を避けることが出来ます。高性
能AE減水剤というコンクリート混和剤を使用すれば、単位水量を下げることが
出来るのですがお金がかかります。ディベロッパーによっては単位水量まで基
準を設けて180キロや175キロの指定をしていることもありますが、その場合
(他の条件により、数値が変ることもありますが)必然的に高性能AE減水剤を
使用しなければならなくなってきます。マンションを購入されるときは、水セ
メント比と単位水量はチェックしたほうが良いかも知れません。

基礎の配筋が大体出来上がると、検査を行います。鉄筋の材質、太さ、本数、
配置を主に検査します。1本1本、全ての鉄筋を検査することは困難なので、主
要な部分の材質、太さ、本数を調べ他の部分は施工会社がチェックした書類を
確認します。しかし配置に関しては基本的に全体を見ることにしています。か
ぶり厚さといって型枠と鉄筋までの距離を確保することを鉄筋コンクリート構
造ではとても重視します。これがきちんと出来ていないと鉄筋のさびによる爆
裂、コンクリートの剥離に繋がります。鉄筋は色々な方向から複雑に絡み合っ
ているので、納めるのが困難でかぶり厚を確保するのは大変です。基準より離
れが少ない部分があると、鉄筋を動かしてスペーサーを入れます。計画性に優
れている現場は整然と鉄筋が並び、修正するところは少ないのですが、時間に
追われている現場は全体的に鉄筋が暴れていて修正するのが大変です。

配筋検査時に設備スリーブの位置、補強も確認します。また耐力壁に窓等を設
けた場合、床にハッチを設けた場合等、その周辺には設計で指示した補強筋が
必要になるので、きちんと入っているか検査します。

鉄筋がしっかり納まっている建物は、耐力的にも、耐久的にも、外観的にも優
れた結果をもたらします。躯体工事の要と言っても良いでしょう。コンクリー
トを打設してしまえば見えなくなってしまいますし、後から修正することは出
来ませんから配筋検査はとても重要な仕事です。

次回は躯体図の作成を紹介させていただきます。





///// 04 建築の本棚 /////

建築に関わる仕事をしている以外の方でも、楽しんでいただける建築関係の本
を選んで紹介させていただきます。

今回紹介させていただく本は

    
 「建築を見る 谷口吉生 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・図書館」
                    エスキスシリーズ 04

                           古谷誠章 編著
                         彰国社  3200円+税


建築設計教育の新しい副読本として、シリーズ化された「エスキス」の4冊目
が本書です。一つの建物を徹底的に見ることを念頭に構成された本です。非常
に詳しいガイドブックで写真や図も多く、文章も解かりやすいので建築に興味
を持っている方ならどなたでも親しむことが出来る本だと思います。

本のサイズはポケット判(130×225ミリ)で、20のスポットの資料が折り込ま
れています。基本的にこの本を持って、現場へ行きその場で本書を開くことが
出来るように製本されています。例えば展示室Aの部分を引っ張り出すと、シ
ョーケースの詳細図や天井ルーバーの詳細図が出てきます。写真に寸法が書き
込まれていて、天井高さ、壁の厚さ、スポットライトのピッチ等が記されてい
ます。スケール感を養うのにとても良い教材だと思います。その他家具や照明
、消火器ボックスなど20のスポットそれぞれの場所にあるものの説明が記載さ
れています。

建築の設計が上手くなるには、自分が気に入った建物を見て感じることが一番
早道だと思います。ただ経験がないと漠然と空間を捉えているだけで、感覚は
身についても具体性に欠けて仕舞い、自分の設計に反映できないことが多いと
思います。この本は具体性の中に建物を見る者を導いてくれます。私もいつか
この本を持って丸亀市に行ってみたいと思っています。書店で見かけることが
ありましたら是非手にとって御覧ください。


丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
http://web.infoweb.ne.jp/MIMOCA/index.html





///// 05 師の言葉 /////

私が実際に接した建築家や書籍のなかで印象に残った言葉を紹介させていただ
きます。


    「必ず自分で確認する」

この言葉は私が学生時代、設計事務所でアルバイトをしているときに所員の方
に言われた言葉です。図面を描いているときに、渡された資料の数字をそのま
ま使って間違った図面を描いてしまったときにいわれました。

最初は間違えたのは自分ではないと思ったので、不満に感じることもありまし
たが、施主に対して「元の資料が違っていたのだから私たちには責任はありま
せん」ということは出来ません。設計者の名前が書いてある図面を提出してい
る訳ですから、責任は設計者にあることになります。やはり未然にミスを防ぐ
ことを常に考えていなければならないでしょう。重要な数字に関しては、二重
三重にチェックを入れることが大切です。

その後長い間建築の設計に携わるわけですが、設計作業は間違い探しの占める
割合が相当多いことがわかりました。下手をすれば半分は間違い探しをしてい
るのではないでしょうか。連載させていただいている 「マンションの完成ま
で」を読んでいただいている方はお解かりになると思いますが、チェックのオ
ンパレードです。

設計者は施主の代理人であり、設計者から出てきた情報は正しいものとして工
事が進められます。正しい情報を流す一番良い方法は、なるべく他人の責任に
しないということです。間違いは必ずありますから、それを想定しながら軌道
修正していくことを設計者は考えていなければならないと思います。気がつく
のに長い年月がかかりましたが、他人の責任にしていては何も進展しないこと
を最初に教えてくれた言葉です。



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■コモンプレイス スタジオは建築士事務所です。

 住宅の設計依頼は勿論、設計事務所の敷居が高く感じているお客さまに対し
 てメニューを用意しています。

1.お客様が書いたスケッチから設計図を作ります。工務店に設計施工を任せて
 しまう場合図面があるとお客さまの意図が明確に伝わり、自分の理想に近い
 形で家創りが進められます。

2.工務店に全てを任せてしまうと工事が進むうちに不安になることや、疑問点
 が出てくると思います。そのような場合のアドバイスを行います。

3.マンション購入の際、フリープラン等のオプションがある場合に図面を作成
 し、お客様の理想に近い空間を作るお手伝いをします。

その他、誠心誠意をモットーに豊かな日常空間と建築文化の創造を目指してお
りますので是非ホームページをご覧ください。

                  http://www.commonplace.jp/
                    
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【発 行】コモンプレイス スタジオ   commonplace studio
【編 集】池澤 雅弘           masahiro ikezawa
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