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■ メールマガジン・・・・・・・バックナンバー第017号
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・・・これからの住宅設計・・・ 第017号(2007.08.01)
建築設計者の立場から住宅を考えるヒントを提供します。
published by commonplace studio
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「これからの住宅設計」は戸建住宅や集合住宅(マンション)またそれらの改
修等、生活空間を作ること全般を題材にして、設計者の視点から住宅の在り方
を、読者の方々と一緒に考えてゆくメールマガジンです。
建築設計、住宅設計に関わる話題を取り上げ、住宅設計者としての経験や理念
をお話することにより、家創りについて違った視線で考える機会を提供するこ
とを目指しています。
読者の方々が住宅を設計する過程に触れることにより、家創りについて何か新
しいことを発見していただければ幸いです。
コモンプレイス スタジオ
代表 池澤 雅弘
※バックナンバーは下記ホームページでも御覧いただけます。
誤字等も含めて、記事の訂正が必要な場合は、ホームページ上で修正させて
いただいています。
http://www.commonplace.jp/
■目次
01 今週のコラム--------------200年住宅ビジョン
02 住宅設計入門--------------No.17 廊下を意識する
03 マンションの完成まで------No.17 工事監理-中間検査
04 師の言葉------------------心に残った建築に関わる言葉
///// 01 今週のコラム //////
「200年住宅ビジョン」
先日投票が行われた参議院選挙において大敗を喫した自民党ですが、以前から
長寿命住宅の普及促進を働きかけています。新築住宅の建設基準や中古住宅の
維持管理等を盛り込んだガイドラインを定め、住宅のリフォームの履歴を記載
した家暦書の制度化を目指しています。また5月末には一戸建やマンションな
ど住宅の長寿化を進めながら中古住宅の流通を活発化させることを盛り込んだ
「200年住宅ビジョン」を定めました。またこのビジョン推進に伴い、色々な
融資を計画しています。詳しい内容は下記のページを参照してください。
日本の住宅は家の価値より土地の価値が高く、その寿命は30年程度で欧米諸国
(英国は77年、米国は55年)と比べても極端に短くなっています。欧米諸国は
数世代に渡って家を受継ぐのに、日本は一世代限りで建て直すことが多いのが
現実です。政府は200年住宅を推進し、住宅の質を上げ数世代に渡り住宅を使
用するようになれば、震災対策、建築廃材に拠る環境負荷の軽減等多くの効果
があると判断しています。
基本的に素晴らしい構想であると思いますが、個人的に幾つかの疑問がありま
す。先ず欧米諸国の住宅が長く使うことが可能である理由の一つに、住宅面積
に余裕があることが挙げられます。現在の3LDKで80平米程度の面積の住宅が20
0年後の生活に対応している保障はありません。折角構造的に頑丈な家を造っ
ても、手狭になり建て直さなければならなくなる可能性があります。一戸建の
場合は増築が可能ですが、土地区画の問題を解決しなければならなくなるでし
ょう。
欧米諸国の住宅は、年月を重ね手を加えた住宅は新築時より価値があるという
文化があります。日本にも古いものを尊ぶ文化はありますが、時の流れに則し
て絶えず変化することを受け止める文化もあり、200年住宅の理念が浸透する
か疑問が残ります。
心配なのは住宅産業に与える影響です。建てては壊すことを続ける事は決して
よいことではありませんが、日本の住宅産業構造が建て直しながら発展する過
程を歩んで来ている部分があり、これを急激に変える事は相当の努力が必要だ
と思います。ハウスメーカーは安くて使い勝手の良い住宅を開発提供してきま
した。急激にこのビジョンが展開すれば、30年後には住宅の着工数が今の半数
以下になり、ハウスメーカーはリフォーム業に転身しなければならなくなるの
ではないでしょうか。
「200年住宅ビジョン」は強制的に200年対応の住宅を造らせる提案ではなく、
多くの法律を作る中で200年対応の住宅を普及させようという試みだと思いま
す。今現在、200年先まで使える住宅は殆ど無いわけですから、普及は望まれ
ることだと信じます。ただ家を創る自由を奪うことに繋がるとすれば、慎重に
運用していただくことを願います。
200年住宅ビジョン
http://sumai.judanren.or.jp/seisaku/page02-13/001.pdf
http://sumai.judanren.or.jp/seisaku/page02-13/002.pdf
///// 02 住宅設計入門 //////
ここでは、一般の方を対象に毎回テーマを決めて建築設計に関するアドバイス
をさせていただきます。
第17回のテーマは「廊下を意識する」
住宅の設計をするとき、廊下をどのように捉えるかによって間取が相当変わっ
てきます。廊下は少なければ少ないほうが良いのか、また部屋と部屋を繋げる
中間領域としての機能を重視するか、考え方はいろいろあると思います。
マンションの場合はなるべく廊下の面積を小さくすることを要求されるのが一
般的です。マンションの居室は通常部屋として独立していますから、廊下から
直接部屋に入れるようにプランをつくります。ですからどうしても廊下の面積
は多くなりがちですが、住戸の形状と玄関の位置が上手くいくと、3LDKで数平
米の廊下で済んでしまうことがあります。その分居室の面積が大きくなってい
るので、ディベロッパーとしては販売し易くなるわけです。逆に奥行きの深い
形状の住戸だと、廊下の片側にしか部屋が設けられず、10平米近く面積を使っ
てしまうこともあります。その場合は何度もプランを練りなおすことを要求さ
れます。マンションの場合は廊下は部屋の面積を減らす嫌われものといえるか
も知れません。
しかし戸建住宅の場合はそうとは限りません。敷地の形状が原因になっている
こともありますが、廊下を広めに取っているケースがよく見られます。和室の
続き間があるとその周囲をぐるりと廊下で囲い縁側を兼ねる間取は昔からよく
ありました。現在では2階建が一般的なので、階段周囲にホールを設け廊下の
機能を果たしていることもあります。ただ戸建住宅であっても建坪が大きくな
れば工事費用が余計にかかるわけで、廊下の存在意味を十分検討する必要があ
ります。
廊下は仕方なく出来るスペースという概念をすて、部屋と部屋を繋ぐ空間がど
うしたら心地よいものになるか考える必要があります。開放的で風が通ること
が必要条件と言えるのではないでしょうか。またパブリックな空間として、絵
や花を飾る場所として最適です。収集した本やレコードを廊下の壁一面に収納
することも出来ます。廊下を否定的な存在とせず、積極的にその効果を意識し
て居室(部屋)とのバランスを考えれば、有意義な空間を創ることが出来ると
思います。
///// 03 マンションの完成まで //////
マンション設計の依頼から竣工にいたる出来事を、設計事務所の立場から紹介
させていただきます。マンションはどうやってできるのか、どれだけの作業が
必要なのかご理解いただければ幸いです。
No17 「工事監理-中間検査」
マンションを建設中に多くの検査を受けることになります。施工者や設計事務
所の検査以外に市や区または指定確認検査機関の検査、消防署の検査、ディベ
ロッパーの検査等が行われます。特に住宅性能評価認定を受けようとしている
場合は頻繁に審査機関の検査が行われます。今回は一般的なケースとして、建
築の検査済証を取得する為の検査を中心に紹介させていただきます。
ある程度の規模の建物では特定工程を指定され、工事がその工程に差し掛かっ
た時点で建築確認提出機関(市、区、指定検査機関等)の検査を受けなければ
なりません。この検査に合格しなければ、その後の工程に進めなくなり工事が
ストップしてしまいします。通常は2階の床梁の配筋が見える状態で検査を行
います。主に配筋を検査しますが、構造関係全般と建物の配置等が設計通りに
行われていることを検査します。
工程が厳しい現場では、配筋が終わると直ぐにコンクリートを打設するように
しなければ工期が遅れてしまいます。しかし中間検査が行われるときは数日間
余裕を見ておかなければなりません。ただ出来れば指摘事項を出来るだけ少な
くして、検査の翌日にコンクリートを打設したいところです。ですから検査に
関わる手続き等をスムーズに行わなければなりません。
中間検査を受けるには申請書を提出しなければなりませんが、法律上検査を受
けることが出来る状態まで工事が終わっていなければ提出できません。そこで
検査数週間前に検査の予約を取っておいて検査官のスケジュールを明けておい
てもらいます。そうしておけば提出して直ぐ検査を受けることが可能になりま
す。逆に予約を取り直すと検査が何日も先になってしまいますので、なんとし
ても予約をした日に検査が受けられるように工事を進めます。
検査で指摘をされるのは、鉄筋のかぶり厚さや設備スリーブの位置等が多く、
指摘事項は適切に修正して写真をとって報告することになります。コンクリー
ト打設前日の午後に検査をしてもらい、その日のうちに修正をして翌日朝一番
で写真を提出すれば、検査に拠る工程の遅れはありません。理想を言えば指摘
事項無しならば、バタバタすることも無いのですが、よく出来ていれば出来て
いるなりに細かい部分まで検査をするので、幾つかの指摘を受けることになり
ます。また修正に時間がかかる指摘を受けた場合は、修正報告が完了するまで
次の工程に進めませんので予定を変えなければなりません。
中間検査は、主に工事が進行してしまえば見えなくなってしまう部分を工事途
中で確認することが主な目的です。ディベロッパーは設備配管等、性能に関わ
る部分を仕上げをする前に検査します。消防署も防火区画、消防設備の配管等
について検査を行います。検査を通り仕上げをしてしまえば、その後人目に触
れることはなくなってしまうので大切な検査です。単に検査を通れば良いとい
うことではなく、後々問題が起これば大変なことになるので、責任の重大さを
感じしっかり施工しなければいけません。
次回はメーカー施工図チェックを紹介させていただきます。
///// 04 師の言葉 /////
私が実際に接した建築家や書籍のなかで印象に残った言葉を紹介させていただ
きます。
「線を消すことをためらってはいけない」
学生時代、設計事務所でアルバイトをしていたときに言われた言葉です。今か
ら20年程前の話になりますが、字消盤といって薄い鉄板に丸や三角の切り抜き
をいれ描いた図面の細かい部分を消せる道具があるのですが、私がこれを多用
して図面が進まないときに所員の方に言われました。
その事務所ではフォルダーという太さ2ミリぐらいの鉛筆の芯を使う筆記具で
図面を描いていました。シャープペンシルは線が硬くなるといって使用出来ま
せんでした。フォルダーから10ミリぐらい芯を出し、研芯器を使って芯を尖ら
し図面を描きます。芯は直ぐに丸まってしまいますが、頻繁に研芯器を使わな
くても、紙とフォルダーの角度を変え、フォルダーを回転させながら描くこと
により芯先が丸くなっても細い線を描くことが出来ます。
線が柔らかいので消しゴムで簡単に消すことが出来ます。字消盤で図面をこす
ると汚れてしまうので、作図が達者になれば訂正部分をある程度の範囲で思い
切って消してしまい、描き直した方が仕上がりも綺麗で早く図面が書けます。
設計には訂正がつき物で、CADが無かった時代せっかく描いた図面を消して直
す作業は辛いものでした。ただその事務所の所長は線を消すことも描くことと
同じぐらい大切なことだと話していました。一度形になったものを消す勇気が
無ければ、創造はそこで止まってしまいます。特に住宅設計の場合は多くの案
を創りながら、検討を重ね最終案を生み出します。線を消すことをためらって
いては次に進むことは出来ません。
図面は表現の手段で、描いているものにとって思い入れもありますが、大切な
のは実際に出来る建物です。描いては消す作業を繰り返し、用紙全体が波うち
薄汚れた頃実施が決定されることもありました。そのとき図面には経緯の残照
が残っています。最初に綺麗に仕上た図面は、始めの一歩に過ぎないことを教
わりました。現在は、CADで図面を描くようになって訂正も楽になりましたが
その残照も綺麗に消えてしまい寂しい気もします。
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■コモンプレイス スタジオは建築士事務所です。
住宅の設計依頼は勿論、設計事務所の敷居が高く感じているお客さまに対し
てメニューを用意しています。
1.お客様が書いたスケッチから設計図を作ります。工務店に設計施工を任せて
しまう場合図面があるとお客さまの意図が明確に伝わり、自分の理想に近い
形で家創りが進められます。
2.工務店に全てを任せてしまうと工事が進むうちに不安になることや、疑問点
が出てくると思います。そのような場合のアドバイスを行います。
3.マンション購入の際、フリープラン等のオプションがある場合に図面を作成
し、お客様の理想に近い空間を作るお手伝いをします。
その他、誠心誠意をモットーに豊かな日常空間と建築文化の創造を目指してお
りますので是非ホームページをご覧ください。
http://www.commonplace.jp/
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【発 行】コモンプレイス スタジオ commonplace studio
【編 集】池澤 雅弘 masahiro ikezawa
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