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■ メールマガジン・・・・・・・バックナンバー第023号
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・・・これからの住宅設計・・・ 第023号(2007.09.13)
建築設計者の立場から住宅を考えるヒントを提供します。
published by commonplace studio
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「これからの住宅設計」は戸建住宅や集合住宅(マンション)またそれらの改
修等、生活空間を作ること全般を題材にして、設計者の視点から住宅の在り方
を、読者の方々と一緒に考えてゆくメールマガジンです。
建築設計、住宅設計に関わる話題を取り上げ、住宅設計者としての経験や理念
をお話することにより、家創りについて違った視線で考える機会を提供するこ
とを目指しています。
読者の方々が住宅を設計する過程に触れることにより、家創りについて何か新
しいことを発見していただければ幸いです。
コモンプレイス スタジオ
代表 池澤 雅弘
※バックナンバーは下記ホームページでも御覧いただけます。
誤字等も含めて、記事の訂正が必要な場合は、ホームページ上で修正させて
いただいています。
http://www.commonplace.jp/
■目次
01 今週のコラム--------------「建築基準法改正の影響」
02 住宅設計入門--------------No.23 LD中心の間取り
03 マンションの完成まで------No.23 工事監理-竣工検査 2
04 師の言葉------------------心に残った建築に関わる言葉
///// 01 今週のコラム //////
「建築基準法改正の影響」
住宅の着工数が大幅に減少しているということです。7月の新設住宅着工数は
前年同月に比べて23パーセント減になっています。今年6月20日に施行された
改正建築基準法により建築確認申請の手続きが変ったことが原因になっている
のは間違いありません。建築確認申請の手続きが変ったことでなぜこれほどの
影響が出るか、建築業界以外の方にはお解りにくいと思いますので簡単に説明
させていただきます。
今回の建築基準法改正は一連の耐震偽装問題に対応して、今まで申請書を作成
提出する側の技術者を信用する「性善説」からそれを疑う「性悪説」に転換さ
せるものといってよいと思います。そのため改正以前と比べ、提出書類記載事
項の増加、申請図面不整合の取り扱い、一定規模を超える建築物の指定機関に
よる構造チェック(構造計算適合性判定)、確認審査期間の延長等の改正が加
えられました。これらにより確認申請が何時下りるかわからないために、業者
が確認申請の提出を手控えているのが現状です。
提出書類記載事項の増加は細かい仕様書の提出を要求され、具体的な仕上げ材
が決まっていなかったり使用設備が決まっていないと受け付けてもらえないと
う不満が出ています。申請図面不整合の取り扱いは、一度確認申請を提出する
と修正が出来ず確認申請の出し直しになってしまう改正です。軽微なものは追
加説明が認められるますが、軽微であるかどうかを判断する基準が整っていな
い状況にあるそうです。出し直しになった場合、着工は大きく遅れてしまいま
す。申請してみないと解からない部分もあり、先が読めないという点で一番影
響が大きい改正項目かも知れません。
審査期間の延長は基本的に改正前の21日から35日に延長されました。また合理
的な理由があれば、新しく加わった構造計算適合性判定に要する期間14日を49
日まで延ばせることになっており、この延期分35日を加えた計70日まで延長可
能となります。こちらも何日で確認申請が下りるかわからない状況を作ってい
ます。
構造計算適合性判定制度は、今回の改正の中心的役割を担うといってよいでし
ょう。確認申請審査機関とは別に構造の専門家によるダブルチェックが義務付
けられました。偽装防止のための配慮か、申請者は確認申請機関を選択するこ
とは出来ますが構造判定機関の選択は出来ないそうです。また構造判定は2人
の判定員がペアになってチェックするのが原則で、判定員の意見が分かれれば
他の専門家の意見を聴取し判定を行うことになっています。
現在の状況は行政側の対応も一貫性が無いようで、運用が上手く行っていない
こともあるようですが、今後運用指針が明確になったとしても提出側にとって
多くの問題が残ります。完成度の高い確認申請図作成のためのスケジュール前
倒し。作業量増加による費用の問題。審査期間延長による工期の調整等が挙げ
られると思います。個人的には、これらの問題により「良い建築のための設計
から申請を通すのための設計への転換」を余儀なくされ、建築の可能性を閉ざ
してしまうことを心配しています。
改正建築基準法等について(国土交通省):
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/h18_kaisei.html
///// 02 住宅設計入門 //////
ここでは、一般の方を対象に毎回テーマを決めて建築設計に関するアドバイス
をさせていただきます。
第23回のテーマは「LD中心の間取り」
通常、住宅は玄関から入ると廊下か玄関ホールがありその先に階段があるケー
スが多いと思います。階段周囲は吹き抜けにしていて採光や通風がとれ充実し
た空間となっている住宅をよく見かけます。この玄関廻りの空間をリビングダ
イニング(以降LDと表記)に上手く取り入れることが出来れば、日常的に豊か
な空間に接することが出来、廊下や玄関ホールの面積を居室に使用することが
出来ます。そこでワンルームのようにLDと玄関を直接結び、階段と吹き抜けを
LDの中に取り込むことを考えてみます。
多くの方が問題にするのは、玄関を開けて直ぐにLDが見えるので生活空間を露
出させてしまうことです。解決方法としては、玄関を通常よりも大きくして玄
関とLDの間に引戸を設けることが考えられます。家の奥に招き入れる客以外に
室内を見られることは無くなります。また入った瞬間に気持ちの良い空間を感
じてもらいたいのであれば、玄関の正面に階段を配置する方法もあります。覗
き込めば室内を見られますが、正面に階段と吹き抜けがあれば意識は正面また
は上方に向きます。加えて家具の配置を工夫すれば気にならなくなると思いま
す。
一般的なプランを考えると、1階にLD、キッチン、浴室、洗面脱衣室、トイレ
で2階に各居室(主寝室、子供部屋等)を配置することが考えられます。LDの
周囲に居室を持ってくるとすれば、通常和室か主寝室だと思います。1階をパ
ブリックスペース、2階をプライベートスペースに分けるのが基本ではないで
しょうか。来客時にトイレ利用や入浴や外出がし難いという欠点が生じる事が
考えられますが、先に記したように玄関付近に階段をつくりその周囲に水廻り
を設置すればほぼ解決できると思います。出来ればトイレは2階にもあった方
が良いと思います。
LDを気持ちのいい空間にすれば、自然に家族がそこに集まるようになります。
その上、廊下の機能を兼ねているので日常的にLDが動線となり、コミュニケー
ションや団欒が生まれる可能性が高まります。また広いLDを最初に確保してお
けば将来LDの一部を他の居室に改修することも可能です。LDは住宅のなかで多
くの可能性を秘めている部屋であり、工夫次第で色々な生活空間を創り出すこ
とが出来ます。
///// 03 マンションの完成まで //////
マンション設計の依頼から竣工にいたる出来事を、設計事務所の立場から紹介
させていただきます。マンションはどうやってできるのか、どれだけの作業が
必要なのかご理解いただければ幸いです。
No23 「工事監理-竣工検査 2(施主、設計事務所)」
分譲マンションの場合、官庁関係の検査が終わるとディベロッパーと設計事務
所の検査を行い細かい施工不良箇所を指摘し、手直し工事を行います。指摘箇
所は多数になることが多いため、その後再び確認検査を行い入居者の検査に当
たる内覧会を迎えます。内覧会で出てきた指摘事項も完了確認を行いますから
検査期間はかなりのロングスパンになります。参考までに一般的なスケジュー
ルを紹介させていただくと、3月末に引渡しの例で、2月中旬官庁関係検査、2
月末検査済証取得、3月頭に施主検査、3月中旬内覧会、3月末引渡しというよ
うなスケジュールです。2月中旬に完全に完成している現場はめったに無く、
多くの場合工事を継続しながら検査を行う状況になります。またディベロッパ
ーによっては完成度を高める為に施主検査の期間を長くする場合もあります。
現場の状況も慌しい時期なので、施主(ディベロッパー)と設計事務所は一緒
に検査を行うことが多くなります。一つ一つの住戸を徹底的にチェックするこ
とが理想なので、人数を出来るだけ集めます。設計事務所は小所帯なので5人
来てくださいと頼まれると、事務所の中堅メンバー総出で参加することになり
ます。竣工時期は3月に集中し1日で終わらないこと多いので、検査の時期は事
務所が閑散としていることが少なくありません。
検査はキズ、汚れ、剥がれ、ズレ、ソリ等細かくチェックします。扉の開閉状
況、戸あたりの設置の確認、物干し金物の設置位置、シールの切れ、畳の浮き
等例を挙げればきりがありません。設備機器についても洗面台には水を張って
漏れが無いか、浴槽の排水時間は適当か確認します。指摘した場所は記録して
もらい、現場にはテープを貼ります。手直しが終わってから剥がすようにして
、未修正がないようにします。
パンフレットとの整合も検査しますが、この時点で間違いが見つかると大変で
す。コンセントが反対の壁についていたりすると、壁を剥がしてやり直さなけ
ればなりません。照明の配置が違っていたり、下がり天井の範囲が違っている
こともまれにあります。これらは完成する前は確認し難い部分で、完成してか
ら周囲の状況との位置関係から見つかる場合が多いです。パンフレットに寸法
の記載は無いので、わずかな違いであれば問題になりませんが、大きく違って
いる場所は壊して修正します。
その他、排気口の正面に縦樋があったり、避難ハッチとエアコンの室外機置場
が一部重複していたり、完成して初めて見つかる問題もあります。これらは検
査後緊急会議を開きどの様に対処するか決めなければなりません。また太陽の
光線によって、外壁のタイルの下地処理が悪い箇所が見つかることがよくあり
ます。目に余るものは修正しますが、足場を外してしまっていますから作業が
大変です。
施主検査前後は現場の忙しさはピークに達します。建設会社も人数を増やして
対応します。担当者は現場に泊り込みになることが多く、施主や職人への対応
に明け暮れます。
次回は「内覧会」を紹介させていただきます。
///// 04 師の言葉 /////
私が実際に接した建築家や書籍のなかで印象に残った言葉を紹介させていただ
きます。
「結局ひとりで決めるもの」
この言葉は、ほぼ就職が決まっていた設計事務所を離れるときに設計部長から
言われた言葉です。どんなに優秀な人材が集まっている設計事務所でも、最終
的にはひとりの人間が決定することにより作品は出来て行くということを最後
に話していただきました。
部長がこの言葉で私に伝えたかったのは次の二つのことだと思いました。一つ
は将来、決めることが出来る能力、立場を身に着けるように努力すること。も
う一つは他の事務所を選んだ私に対して、どこの設計事務所であっても決める
ことが出来る人により建築は変ってくるのだから、組織を選択するより自分の
能力を高めることが大切だというこを私に話したかったのだと思います。
例えば一つの住宅を10人の案を持ち寄って設計しようと思えば、各人自分の案
が一番良いと思っているのでまとまりません。必ず採用する案を決定する人が
居るはずです。自分以外の案に投票して多数決で決める方法もありますが、そ
の場合上に立つ人が選ばれた案を評価して世に出して良いか決めていると思い
ます。
高い評価を得る建築を設計した建築家は名前を残しますが、大きな建物全てを
自分で考えた訳ではなく、重要なポイントを決めてそれに従って多くの人が作
業を進めているはずです。どんなに優秀なスタッフが居ても「決める人」の能
力が優れていなければ良い結果が生まれません。
建築は「決める」ことにより生まれ、「決め方」によって大きく変化し評価も
変ります。その責任を果たせるように努力を続けなければなりません。
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■コモンプレイス スタジオは建築士事務所です。
住宅の設計依頼は勿論、設計事務所の敷居が高く感じているお客さまに対し
てメニューを用意しています。
1.お客様が書いたスケッチから設計図を作ります。工務店に設計施工を任せて
しまう場合図面があるとお客さまの意図が明確に伝わり、自分の理想に近い
形で家創りが進められます。
2.工務店に全てを任せてしまうと工事が進むうちに不安になることや、疑問点
が出てくると思います。そのような場合のアドバイスを行います。
3.マンション購入の際、フリープラン等のオプションがある場合に図面を作成
し、お客様の理想に近い空間を作るお手伝いをします。
その他、誠心誠意をモットーに豊かな日常空間と建築文化の創造を目指してお
りますので是非ホームページをご覧ください。
http://www.commonplace.jp/
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【発 行】コモンプレイス スタジオ commonplace studio
【編 集】池澤 雅弘 masahiro ikezawa
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