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『これからの住宅設計』(ID:0000230971) 読者登録解除フォーム
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・・・・・・バックナンバー第024号

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  ・・・これからの住宅設計・・・      第024号(2007.09.27)

   建築設計者の立場から住宅を考えるヒントを提供します。
                published by commonplace studio
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「これからの住宅設計」は戸建住宅や集合住宅(マンション)またそれらの改
修等、生活空間を作ること全般を題材にして、設計者の視点から住宅の在り方
を、読者の方々と一緒に考えてゆくメールマガジンです。

建築設計、住宅設計に関わる話題を取り上げ、住宅設計者としての経験や理念
をお話することにより、家創りについて違った視線で考える機会を提供するこ
とを目指しています。

読者の方々が住宅を設計する過程に触れることにより、家創りについて何か新
しいことを発見していただければ幸いです。



                        コモンプレイス スタジオ
                          代表  池澤 雅弘


※バックナンバーは下記ホームページでも御覧いただけます。
 誤字等も含めて、記事の訂正が必要な場合は、ホームページ上で修正させて
 いただいています。

                      http://www.commonplace.jp/


■目次

 01 今週のコラム--------------「豊かな生活とは」
 02 住宅設計入門--------------No.24 回遊性のある住宅
 03 マンションの完成まで------No.24 工事監理-内覧会
 04 師の言葉------------------心に残った建築に関わる言葉 



///// 01 今週のコラム //////


「豊かな生活とは」

景気は長い期間回復状況が続いていますが、暮らしが楽になったという話は余
り聞きません。景気が良くなったといっても、儲けているのは一部の人間でそ
れが国民全体に浸透してこないことが原因の一つかも知れません。確かに就職
率の向上、失業率の減少等直接生活に結びつく改善は見られ、将来に対する不
安感は薄れつつあります。しかし緩やかな経済成長は国民全体が豊かになる前
にまた不景気が来るような気がして心配です。

それぞれ人には事情、信念、理想があり、金銭を追いかけるような生活が出来
ない状況があると思います。生活が維持できないような状況は別として、限ら
れた収入の中で豊かに生活出来る方法を考える必要があるのではないでしょう
か。欧米ではお金が無くても生活に対する満足度が高いという話を良く聞きま
す。これは社会資産が豊かであることが理由に挙げられます。100年近く前に
建てられた集合住宅が数多く残されていて、それが安い金額で借りられます。
計画的に造られた物が多いらしく、自然環境も豊かで利便性も高いようです。
日本の住宅は木造戸建住宅が中心なので、自分でお金を貯めて土地を探し家を
建てなくてはなりません。また賃貸住宅を利用するにしても最近建てられた住
宅は家賃が高くなります。

以前このコラム(NO.017)で書かせていただきましが、自民党が「200年住宅
ビジョン」を推進しています。福田康夫新総理が中心になっていたそうで、今
後更なる発展は期待できるのではないでしょうか。技術的、経済的理由だけで
はなく、日本人特有の住宅に対する考え方もありなかなか浸透させるのは難し
いと思いますが、この構想が実現できれば将来日本にも多くの社会資産が残さ
れることになります。ただこの社会資産を有意義に利用できるのはかなり先の
話で、現時点に於いては一人一人自分にとって「豊かな生活」とは何か考え、
自ら理想に近付ける必要があると思います。

住宅を建てることは「豊かな生活」を実現する大きな一歩であると考えられま
す。人生の中で一番負担も大きいことなので計画的に進めなければいけません
が、時間の経過に従って家族構成も変るし趣味や時間の使い方も変ってくると
思います。また新築したときが一番良くてその後期待感がが薄れていくようで
は「豊かな生活」を営むのは難しいのではないでしょうか。私がお勧めするの
は、少し広い土地を手に入れて、そこに必要最小限の小さな家を建てることで
す。そして生活状況によって何段階かに分けて増築をしていきます。そのとき
そのときの事情に合った環境を手に入れやすくなるし、家に手を加えていくこ
とは夢を継続していくことになると思います。常に自分の生活を見つめ続ける
ことにもなり、家族の成長とともに形を変えていく家は「豊かな生活」の象徴
となる可能性を持っているのではないでしょうか。





///// 02 住宅設計入門 //////

ここでは、一般の方を対象に毎回テーマを決めて建築設計に関するアドバイス
をさせていただきます。

第24回のテーマは「回遊性のある住宅」

住宅を設計するとき回遊性を考えることは豊かで楽しい生活空間を生み出しま
す。ある部屋に行くのに幾つかのルートが考えられれば、より多くの空間事象
に接することが出来ます。簡単な例でマンションの和室を取り上げると、行灯
部屋の和室はLDからのルートと廊下からのルート二つ用意されているプランが
多いと思います。LDからは開放された連続した空間を感じることができ、廊下
から出入りする場合はLD側を閉じて個室的な用途として使うことが出来ます。
また洗面脱衣室もキッチンと廊下から出入りできるようにしているプランをよ
く創ります。来客等に配慮して脱衣室は廊下から出入りするのが基本ですが、
キッチンからのルートをつくれば洗濯等の作業が台所仕事と平行して出来るの
で便利です。部屋の配置によっては近道になることもあり、単に和室や洗面脱
衣室を通り抜けるだけでも、日常と少し違った生活を感じさせてくれると思い
ます。

戸建住宅の場合は色々な回遊性を考えることが出来ます。和風住宅であれば続
き間をぐるりと囲む廊下は典型的な例と言えるでしょう。広間として大きな空
間をつくることも出来るし個室として利用することも可能です。廊下は外部空
間との開放された中間領域となり縁側として利用できます。台所の勝手口も回
遊性をつくり出します。勝手口をつくれば外部に物置をつくり利用することが
出来るし、植栽の世話もできます。またメインアプローチへの通路を考えます
ので外部空間を豊かにします。

中庭に面した外部廊下を通して部屋と部屋を繋ぐことも効果的です。それぞれ
の部屋の気配を感じることが出来ますし、声を掛ければそれぞれの部屋から中
庭を通ってLDに集まってくることが出来ます。また階段を二つ設けて立体的に
回遊性をつくる方法もあります。廊下に面して階段をつくり、その他にダイニ
ングを吹き抜けにして階段を設置しリビングを2階に設けます。リビングから
ダイニングを見下ろす形になりますので気持ちの良い空間が創れます。

プランを考える時、回遊性を意識すれば色々な可能性が見つかるはずです。使
い勝手をよくするだけではなく、色々な方向から家を見ることが出来て生活し
ていて多くの発見があると思います。空間の隅々まで生命感を感じることが出
来れば理想的です。





///// 03 マンションの完成まで //////

マンション設計の依頼から竣工にいたる出来事を、設計事務所の立場から紹介
させていただきます。マンションはどうやってできるのか、どれだけの作業が
必要なのかご理解いただければ幸いです。


   No24 「工事監理-内覧会」

施主検査が完了し、いよいよマンション購入者(入居者)の竣工検査にあたる
内覧会が行われます。内覧会前は現場は慌しく手直し工事が行われ、チェック
シート等もつくらなければならないので現場担当者はフラフラの状態で内覧会
に突入することがよくあります。ディッベロッパーにもよりますが、10年程前
までは設計事務所が内覧会に参加することは余りありませんでした。あくまで
も営業行為と捉えていたのだと思います。最近は購入者の質問も専門的になり
、その場で問題を解決しないと信頼関係が失われる結果になってキャンセルに
繋がることもあるようで、当日待機させられることが多くなりました。

内覧会当日は建設会社から多くの人を記録員として集めてもらい、購入者1人
(1組)に1人付いてもらい、指摘事項を記録してもらいます。購入者によって
検査内容はかなり違い全体をざっと見て「よく出来てますね」と言って終わっ
てしまう方もいれば、ごくわずかなキズも見逃さないように細かく見る購入者
もいます。

細かいキズやヨゴレは数が多くても簡単に手直しできるのですが、問題になる
のはしっかり施工が出来ているのに購入者の評判が悪く改修の希望が出た場合
です。具体的には「石と目地の色が合っていない」「扉の木目が汚い」等パン
フレットに表現されていない内容です。石と目地の色合わせはサンプルを使っ
て行っていますが、厚さが薄い石などは床に貼ることによって若干色が変るこ
とがあります。また扉の木目は天然木を薄くスライスしたものをボードに貼り
付けている扉を使用した場合、扉一枚一枚木目が変ります。当然シート張りよ
り仕様が高いのですが、自然が生み出す木目はまれにおかしな形を生み出しま
す。

どちらも評価に主観が入るので、指摘通りに改修するべきかどうか判断が難し
いところです。またお金をどこが出すかという問題もあります。製品管理的に
問題があると判断すれば建設会社の負担になりますし、避けられない問題であ
れば施主の負担になります。マンションが完売していれば余りもめることは無
いのですが、そうでない場合はなかなか結論が出ません。最終的には購入者に
出来る限りの理解を求めた上、どうしても直して欲しいという要望がでれば改
修し、工事全体の追加工事を考慮の上金額の調整を行います。

設計事務所は購入者から専門的な質問が出たときに回答するために待機してい
ます。専門職として中立的な立場で対応するため失敗もあります。例えば各室
の換気を確保するためドアを10ミリから20ミリ浮かしていますが(アンダーカ
ット)20ミリ浮かしていると、何でこんなに隙間が開いているのかクレームが
出たことがあります。検査の記録員が「換気を確保しなければいけない法律が
あるため」と回答しましたが、それが納得できない購入者がいて詳しい説明を
して欲しいと頼まれます。いい加減なことはいえないので、「最低10ミリ程度
とされているが、施工誤差やカーペットの厚みを考慮し安全を見て20ミリにし
た」と回答すると、手間を掛ければもっと隙間を小さく出来たはずだ納得して
くれません。結局、販売担当者がモデルルームも同じように作っていたという
説明をして、しぶしぶ納得してもらうことになります。クレームになっていな
い質問は知識が深まったことを喜んでもらえる場合もありますが、クレーム対
応の場合は中途半端な説明が出来ない立場なので火に油を注ぐこともあり、個
人的にはその場で購入者に設計事務所が説明することは余り良い方法ではない
と思っています。

内覧会に参加するのはなるべく避けたいという気持ちも働いてしまいますが、
実際に出来た建物で生活を始める方々に接することにより色々なことを教わり
ます。特に新しい生活に希望を持ち、喜んでもらっている姿を見ると今までの
苦労が何処かに行ってしまいます。工事に関わった全てのものにとって価値あ
る瞬間ではないでしょうか。


次回は「引渡し」を紹介させていただきます。





///// 04 師の言葉 /////

私が実際に接した建築家、恩師、仕事仲間や書籍等のなかで印象に残った言葉
を紹介させていただきます。


    「創りたいものをハッキリ持っていないと始まらない」

この言葉は、音楽教室の先生に言われた言葉です。「量販されている楽器はよ
く出来ていてよく鳴るし音程も確かだが、音色に個性が無く長い間使っている
と飽きてしまう。創りたい音色、響きを持っていなければ本当によい楽器はで
きない」と話していました。量販されている楽器の音は機能的問題を解決して
「結果的にできた音」なのです。

名を残す楽器は製作家の魂が乗り移っているような個性的で凄い音が出てきま
す。生命感があり、聴いていて心が揺さぶられるような感動を生み出します。
演奏すればその度に新しい発見があり何かを教えてくれます。これは製作家に
ハッキリした創り出したい「理想の音」があり、それを追求した結果です。

住宅に於いても、どんな家を創りたいか理想像がハッキリしている場合とそう
でない場合で設計が全く変ってきます。何も言われなければ設計者は健康的で
機能的な家を創ろうとすると思います。しかし施主がそれを凌駕するような、
強い理想をぶつけて来れば、家を創る上の必要事項の優先順位が大きく変って
きます。

自分では「理想の家」を見つけ出せなくても建築家と接することによりそれが
見つかることもあります。人は多かれ少なかれ住む家に影響を受けます。自分
が住む家に何を期待し、どんな影響を受けたいかハッキリしていた方が、納得
できる家が出来ると思います。多少不便であっても刺激ある日常が存在し多く
の発見があるはずです。

設計者側からすれば、「理想の家」を創り出すことは並の努力では成し遂げら
れません。抽象的な概念を具体的な形にして尚且つ家としての形状、機能の中
に組み入れなければなりません。多くの知識と高い技術、造形力そして決断力
が必要になります。私の理想は自然な佇まいのなかに上手く理想を組み入れる
ことです。まだまだ修行が足りません。





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■コモンプレイス スタジオは建築士事務所です。

 住宅の設計依頼は勿論、設計事務所の敷居が高く感じているお客さまに対し
 てメニューを用意しています。

1.お客様が書いたスケッチから設計図を作ります。工務店に設計施工を任せて
 しまう場合図面があるとお客さまの意図が明確に伝わり、自分の理想に近い
 形で家創りが進められます。

2.工務店に全てを任せてしまうと工事が進むうちに不安になることや、疑問点
 が出てくると思います。そのような場合のアドバイスを行います。

3.マンション購入の際、フリープラン等のオプションがある場合に図面を作成
 し、お客様の理想に近い空間を作るお手伝いをします。

その他、誠心誠意をモットーに豊かな日常空間と建築文化の創造を目指してお
りますので是非ホームページをご覧ください。

                  http://www.commonplace.jp/
                    
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【発 行】コモンプレイス スタジオ   commonplace studio
【編 集】池澤 雅弘           masahiro ikezawa
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