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■ メールマガジン・・・・・・・バックナンバー第054号
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・・・これからの住宅設計・・・ 第054号(2011.04.26)
建築設計者の立場から住宅を考えるヒントを提供します。
published by commonplace studio
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このたびの東日本大震災により被災された皆様、ご家族、関係者の皆様に心よ
りお見舞い申し上げます。被災地の一日も早い復興をお祈りいたします。
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「これからの住宅設計」は戸建住宅や集合住宅(マンション)またそれらの改
修等、生活空間を作ること全般を題材にして、設計者の視点から住宅の在り方
を読者の方々と一緒に考えてゆくメールマガジンです。
建築設計、住宅設計に関わる話題を取り上げ、住宅設計者としての経験や理念
をお話することにより、家創りについて違った視線で考える機会を提供するこ
とを目指しています。
読者の方々が住宅を設計する過程に触れることにより、家創りについて何か新
しいことを発見していただければ幸いです。
コモンプレイス スタジオ
代表 池澤 雅弘
※集合住宅の計画案(ボリュームチェック)を行います。長年の経験に基づく
提案をさせていただきますのでご相談下さい。
※木造住宅の耐震診断、耐震補強のページをホームページに公開しました。
※バックナンバーは下記ホームページでも御覧いただけます。
誤字等も含めて、記事の訂正が必要な場合は、ホームページ上で修正させて
いただいています。
http://www.commonplace.jp/
■目次
01 コラム -----------------「想定と責任」
02 住宅設計入門--------------No.54 地震力
03 word of life--------------No.02 核融合発電
///// 01 コラム //////
「想定と責任」
凄まじい被害をもたらした東日本大震災。少しずつではありますが復興への足
がかりを探る動きが感じ取れます。しかし、それを妨げているのが東京電力福
島第一原子力発電所事故です。東京電力は事故発生当時から想定外の災害と強
調しておりましたが、多くの人が「想定外ではなく想定していないだけではな
いか」と感じ取られていると思います。私も心の中で東京電力を強く非難して
いましたが、いろいろな情報が入ってくるうちに全てを東京電力の認識不足と
してしてしまうことは早計と感じるようになりました。
福島第一原発は建設当時チリ地震による津波を考慮し3.1メートルの津波を想
定しました。その後、平成14年土木学会が出した指針に基づき六基の発電設備
ごとに5.4から5.7メートル(発電設備によって想定レベルが違います。)に改
めました。この状態が現在まで続いていたことになります。実際に福島第一原
発を襲った津波は14メートル以上であったと言われています。過去に直ぐ近く
で発生した明治、昭和の三陸地震による津波や北海道南西沖地震の津波を考え
れば想定が低すぎると考えるのは当然です。原子炉という、事故があれば国家
存続に相当する影響力を持つ施設を造る為の想定としてはひどすぎると思いま
した。
ただ、行政における安全管理についても大きな疑問を持ちます。原子力安全委
員会は平成18年9月に「耐震設計審査基準」を改定し耐震基準を強化し津波に
ついても「極めてまれだが発生する可能性あると想定される」レベルに備える
ように定めました。つまり、それまでは極めてまれに発生する津波は想定外で
あることを国が認めていたことになります。
既存の原発については耐震設計を先行して対応し、その後に津波対策を講じる
手順になっていたので、対策が実施される前に今回の事故が起きてしまいまし
た。東京電力の肩を持つわけではありませんが、福島第一原発は海面から10か
ら13メートルの高さにあり、建設当時の基準の3倍以上の高さにありました。
そこに隙が生まれたのかもしれません。
昔、国会中継である科学技術庁長官が「原子力発電所は関東大震災に相当する
地震が来ても問題が無いように造られている」と答弁していました。つまり近
年に経験した最大の地震を想定すれば事足りるという程度に閣僚も官僚も考え
ていたことになります。(解っていても事業を推進を優先したのかも知れませ
ん。)専門家や一部の国民は当時から疑問をもっていたと思いますが、それが
大きく響かなかったのは高度成長期に浮かれていた国民一人一人にも責任があ
るような気がします。
しかし、想定に限界があるのも事実です。今回の想定は余りにも低すぎたとし
ても、テロや戦争が起きればどのような状況になるかわかりません。結局は原
発を100パーセントコントロールすることは不可能で、その存続について考え
ていかなければならなくなるのではないでしょうか。ただ、原発をなくすこと
は簡単な道のりではありません。火力発電は石油を大量に使うのでいつか底を
尽き環境的にも問題があります。自然エネルギーは国土(平地)が狭い日本に
は不利だと聞きます。それでも震災の影響で人の価値観が変わってきているこ
とを感じます。当たり前の日常に価値を求め、物事の本質を大切する時代が来
れば、電力の消費量も減り原発をなくすことは可能かもしれません。
///// 02 住宅設計入門 //////
ここでは、一般の方を対象に毎回テーマを決めて建築設計に関するアドバイス
をさせていただきます。
第54回のテーマは「地震力」
自分の家は地震にどの位丈夫なのだろうかと心配する人も多いと思います。こ
こでは建物の設計において地震力を定量化する式を紹介させていただきます。
実際の構造計算を理解するには専門的な知識が必要になりますが、何が大きく
なると地震力が大きくなるか、また地震力をなるべく小さくするにはどうした
らよいかを感じ取っていただきたいと思っています。地震力は地震が発生した
ときに働く力です。地震に対する耐力と考えると全く逆になってしまいますの
で注意してください。また、地震力はX方向、Y方向に同じ力が働くことになり
ます。構造設計を行うときはそれぞれ別々に耐力を設定します。
まず地震力は水平動と垂直動がありますが建物に大きく影響するのは水平力で
す。この水平方向の力を地震層せん断力といいます。地震層せん断力は階によ
って値が違ってきます。ここではi階の地震せん断力をQiと表します。(・は掛
けるを表します。)
地震せん断力Qi=Ci・Wi
ここで
Qi:i階に作用する地震層せん断力(i階の中心のレベルに働く)
Ci:i階の地震層せん断係数
Wi:i階より上の建築物の重量(i階の中心のレベルより上部の合計の重さ)
これが地震力に対する最も基本的な式です。1階から最上階まで全ての各階で
地震層せん断力以上の耐力をそれぞれ用意する必要があります。どこか1層だ
けでも弱い階があるとその建物は壊れてしまいます。話が専門的になってきま
したが、まずこの式から読み取れるのは建物が軽いほど地震力は小さくなると
いうことです。それから対象階より上の階の重量は全てその階にかかってきま
すので下の階ほど地震力が強く、上の階ほど地震力は弱くなります。(中高層
建物ではCiが上部階で大きくなることがあるので注意が必要。)
さて少し難しくなりますが上の式のCi(地震層せん断係数)を説明します。
式に表すと
地震層せん断係数Ci=Z・Rt・Ai・C0(シィゼロ)
全て掛け算なので、個々の係数それぞれの数値が大きいほど地震力は大きくな
り小さいほど地震力は小さくなりますます。
Z:地震地域係数。過去の地震に関する記録から係数を決めています。当然地
震が起こりやすい地域が大きい数値になります。例として関東地方は1.0、東
北地方の日本海側0.9、九州北西部0.8、沖縄0.7等です。また、静岡県は県の
構造設計指針によって1.2となっています。
Rt:建物の一次固有周期と地盤の振動特性から決まる数値です。一次固有周
期は一般に高いほど、柔らかいほど大きな数値になります。一次固有周期が
小さい場合Rtは地盤に関係なく1.0となります。低層の建物は一次固有周期が
小さくほとんどの場合Rtは1.0となります。一次固有周期がある数値以上にな
ると地盤が頑丈なほど小さな数値(1.0以下)になります。(実際には頑丈な
順に第1種地盤、第2種地盤、第3種地盤の3段階に別れていてそれぞれ数式が
用意されています。)
Ai:地震層せん断係数の高さ方向の分布係数。難しい名称となっていますが、
上階にいくほど大きな数値になり、一次固有周期が長いほど大きくなります。
つまり大きく振れる場所は地震力は大きくなります。高層になるほど一次固有
周期の影響を大きく受けます。
C0(シィゼロ):標準せん断力係数。地震の規模と地震力を使って何を求める
かによって替わります。一般に住宅等低層の建物で使用される数値はC0=0.2。
木造の著しく軟弱な地盤上では0.3以上と定められています。基準上ではあり
ますが地盤が悪いと1.5倍の地震力が働くことになります。
上記から建物が軽くて、過去に地震が余り発生していない地域で、地盤が頑丈
で、低層であるとき地震力は小さくなります。
実際の耐震診断は壁の配置や建物の劣化等も考慮して判断しなければなりませ
ん。最後に国土交通省住宅局が監修した一般向けの耐震診断ガイド「誰にでも
できるわが家の耐震診断」をご紹介します。
http://www.kenchiku-bosai.or.jp/seismic/file/wagayare.pdf
///// 03 word of life //////
ここでは住生活にかかわる言葉を取り上げ、その言葉と住宅の関りについて考
えてます。
社会現象用語から商品名まで幅広く取り上げて行きたいと思います。
第2回のテーマは「核融合発電」
現在の原子力発電は核分裂の作用によって発電が行われています。核分裂は反
応が始まると簡単には止めることが出来ず、非常に強い放射性廃棄物を発生さ
せることが大きな欠点です。この欠点を解決する可能性があるのが核融合によ
る発電です。太陽を含め宇宙の輝いている星は全て核融合によってエネルギー
を発していると言われています。
物質を超高温で熱しプラズマ状態にすると、物質同士が融合し新たな物質を作
り出す核融合が起こります。この時に発生したエネルギーを用いる発電方法が
核融合発電です。常態的に反応しているのでなく融合を起こさせようとしてい
るときのみ反応するので作業をやめてしまえば反応は止まります。使用材料は
重水素と三重水素で、これらを使ってヘリウムと中性子を発生させます。ウラ
ンやプルトニウムといった危険な放射能物質を発生させる物質を使用していな
いので安全と言われています。
核融合発電の実験炉は2019年に完成予定です。2030年にデモ炉を完成させ安全
性を実証した後、2050年に実用化を目指しているそうです。もし順調に開発が
進み安全で二酸化炭素も窒素酸化物も高レベル放射性物質も出さない核融合発
電が完成すれば人類のエネルギー問題に一区切りつけるかもしれません。太陽
光発電など自然エネルギーによる発電は供給が不安定で発電量にも限りがあり
ます。自然エネルギーを補助的使い、核融合発電が完成するまで何とか石油な
ど化石燃料の枯渇を防ぐのが一つの解決策だと思います。見通しが付いた時点
で現在の核分裂による原子炉を順次廃炉にして行けばよいのではないでしょう
か。
しかし、問題が無いわけはありません。中性子が発生するため核融合炉内に高
レベルの放射化物が発生すると言われています。これは低放射化材料を開発す
ることによって解決する方向ですがこれからの課題です。またプラズマを発生
させるのに1億度の過熱が必要であることや、巨大なエネルギーが瞬発的に発
生することなどから融合炉の安全性は慎重に見極めなければならないと思いま
す。超高効率の太陽光発電や大容量高性能の蓄電装置、また宇宙や砂漠での発
電を可能にする送電装置が発明、開発されれば自然エネルギーが取って代わる
時代が訪れるかもしれません。
自然科学研究機構 核融合科学研究所
http://www.nifs.ac.jp/index-j.html
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■コモンプレイス スタジオは東京杉並区の一級建築士事務所です。
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【発 行】コモンプレイス スタジオ commonplace studio
【編 集】池澤 雅弘 masahiro ikezawa
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