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■ メールマガジン・・・・・・・バックナンバー第055号
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・・・これからの住宅設計・・・ 第055号(2011.07.12)
建築設計者の立場から住宅を考えるヒントを提供します。
published by commonplace studio
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このたびの東日本大震災により被災された皆様、ご家族、関係者の皆様に心よ
りお見舞い申し上げます。被災地の一日も早い復興をお祈りいたします。
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「これからの住宅設計」は戸建住宅や集合住宅(マンション)またそれらの改
修等、生活空間を作ること全般を題材にして、設計者の視点から住宅の在り方
を読者の方々と一緒に考えてゆくメールマガジンです。
建築設計、住宅設計に関わる話題を取り上げ、住宅設計者としての経験や理念
をお話することにより、家創りについて違った視線で考える機会を提供するこ
とを目指しています。
読者の方々が住宅を設計する過程に触れることにより、家創りについて何か新
しいことを発見していただければ幸いです。
コモンプレイス スタジオ
代表 池澤 雅弘
※集合住宅の計画案(ボリュームチェック)を行います。長年の経験に基づく
提案をさせていただきますのでご相談下さい。
※木造住宅の耐震診断、耐震補強のページをホームページに公開しました。
※バックナンバーは下記ホームページでも御覧いただけます。
誤字等も含めて、記事の訂正が必要な場合は、ホームページ上で修正させて
いただいています。
http://www.commonplace.jp/
■目次
01 コラム -----------------「豊かな減額」
02 住宅設計入門--------------No.55 構造の選択
03 word of life--------------No.03 外断熱工法
///// 01 コラム //////
「豊かな減額」
一般的に、住宅建設費の減額方法は材料や住設機器を金額の低いものに変えた
り、構造、断熱性能などの基本性能を抑えたりすることにより成り立たせるこ
とが多いと思います。勿論、生活するには充分な性能の確保やメーカー変更な
どの工夫により、ほとんど同等のものを用いても金額が下がるように最善の努
力をすることは当然のことですが、どうしても我慢を重ねてしまうという印象
を拭い去ることは出来ないと思います。
「金額を下げることに力を注ぐことによりかえっていい家が出来た」というこ
とが理想ですが、そのようなことを可能にする為には住宅との関り方を考えな
直す必要があると思います。ただこれは設計が完了したものをなるべくそのま
まにして減額するという発想ではなく、決められた金額でどのような家が建て
られるか考え直すという発想を持たなければなりません。極端な例は都心から
郊外に移動すれば、不便になるかもませんが自然と触れ合えたり、広い部屋を
確保したり出来るわけですから新たな価値が生まれます。どのような家を建て
たいか根本に戻って考えなおすことが必要だと思います。勿論、工務店や設計
事務所との契約関係も守る必要も出てくるので、出来る範囲でということにな
ります。
先ほどの例は極端過ぎるとは思いますが、住宅には「無くす」ことによって生
活事象に刺激を与え豊かな日常を生み出すことがあり得るということです。以
前、住宅設計入門の「一寸変わった減額案」(第06号)の中で説明した、間仕
切壁を出来るだけ無くすとか、部屋の入り口に建具を設けないなどの案は室内
空間を豊にする案です。また、開放的な空間を創るために、空調の効きが悪か
ったり雨音が大きく聞こえるという欠点が伴いますが天井を無くし構造材を表
しにすることにより減額になることもあります。落ち着いた空間を生み出すた
めに、明るさや開放性を犠牲にして窓や照明を減らすことも考えられます。苦
しい判断をしていかなければならないかも知れませんが、その先に面白い家が
出来上がる可能性があるのではないでしょうか。限度もありますが、工事費も
含めて厳しい条件ほどいい家が出来るをいう気持ちを持ち続けることが大切だ
と思います。
日本の財政も悪化の一途をたどっていますが、このような時代だからこそ発想
の転換が必要だと思います。多少の犠牲を払っても本当に必要なもの大切なも
のを見分けて、それを守り抜くことにより守ったものはさらに輝きます。あれ
もこれもというステレオタイプ型の考えではこれからの日本は成り立たなくな
ってしまうような気がします。
///// 02 住宅設計入門 //////
ここでは、一般の方を対象に毎回テーマを決めて建築設計に関するアドバイス
をさせていただきます。
第55回のテーマは「構造の選択」
日本の戸建住宅の構造は主に木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造が有りますが
、木造住宅が大多数を占めています。何か特別な理由が無い限りは木造を選択
するといっても過言では無いと思います。木造は安価(鉄骨造では木造の3割
から4割増し、鉄筋コンクリート造では5割増しといわれています。)で加工性
がよく増改築が容易という利点があります。何よりも古代から木を用いた住い
づくりは引き継がれており、その伝統は日本人の心の中に深く刻み込まれてい
ます。今回はなぜそれでも敢えて鉄骨造、鉄筋コンクリート造を用いて家を建
てるのか理由を考えながら構造選択のポイントを探ってみたいと思います。
鉄骨は木に比べて強度があり、節目なども無いため品質も高く安定した材料で
す。木造では出来なかった室内に柱が無い大きな空間を創ることが可能で、1
階に大きな駐車場がある3階建て住宅を建てることも可能です。また、木造で
はバランスよく壁を配置して耐力を生み出しますが、鉄骨造は柱梁からなるラ
ーメン構造ですから壁をつくらなくても構造が成り立ちます。ですから間口が
極端に狭いうなぎの寝床のような敷地では、間口方向に壁を造らなくでも構造
が成り立つ鉄骨造を採用することが多くなります。
鉄骨造だからこそ出来る意匠があります。奥深い庇や曲面の屋根、細い柱、ト
ラスを組んだ梁、H鋼のライン(フランジの小口)などデザインに利用できる
要素は豊富です。仕上材で構造体を包み込み木構造と変わらない外見にするこ
とは可能ですが、多くの場合積極的に鉄骨独自の意匠を表現しています。デザ
インのために鉄骨造とすることも少なくありません。
鉄筋コンクリート造の利点は耐震性、気密性、遮音性、防火性、耐久性、形態
の自在性などが上げられます。どれも建物の基本性能でありそれなりの価値を
入居者に与えるものだと思います。耐震性に関しては低層戸建住宅を鉄筋コン
クリートで造った場合、相当の耐力が期待できます。ただし建物の重量が大き
くなるので地盤が悪い場合やロングスパンの計画をした場合など問題が生じる
可能性があります。耐久性に関しては50年から100年の寿命が期待できます。
寿命の長短に関してはコンクリートの配合計画に大きく左右されます。シロア
リなどの問題も生じないので安心して長い間使用できることを考えると大きな
利点と言えます。柱、梁などの構造材に関しては鉄骨造も100年程度の耐久性は
ありますが、壁、屋根などの部材は一般に取替が必要になります。鉄筋コンク
リート造でも外壁の仕上材、防水材などのメンテナンスは必要になります。
鉄筋コンクリートは型枠にコンクリートを流し込んでつくるので形態の自在性
があり、自由な形状を生み出すことが出来ます。曲面の壁や細かく段がついた
軒裏など問題なく造ることが出来ます。また、バルコニーや庇など建物本体か
ら突き出た部分を同時にコンクリートを流し込むことによって一体的に造るこ
とが出来ます。木造や鉄骨造で同じようなものを造くろうとすると、雨仕舞が
難しかったり施工に手間がかかることがあります。
鉄骨造や、鉄筋コンクリート造が選択される一般的な理由は耐火性能が優れて
いるからだと思います。他の性能は仕様を高くしたりすれば木造でも対応でき
ることが多いと思いますが、同等の耐火性能を得ることは不可能です。法規的
にも防火地域に指定されている地域では100平米を超える木造住宅(100平米以
下でも準耐火構造にする必要有)を建てることは出来ません。
それぞれの構造に利点があり、欠点もあります。また性能項目によっては木造
であっても仕様を上げることによって同じような性能を得ることが出来ます。
戸建住宅は構造の選択によって出来上がる家は大きく変わりますので、知識を
蓄えいろいろ思い描くことは楽しいことだと思います。
///// 03 word of life //////
ここでは住生活にかかわる言葉を取り上げ、その言葉と住宅の関りについて考
えてます。
社会現象用語から商品名まで幅広く取り上げて行きたいと思います。
第3回のテーマは「外断熱工法」
外断熱工法は主にコンクリートを用いた建物の外側を断熱材で包み込み、外気
との断熱効果を生み出す方法です。逆に外壁の室内側に断熱材を設ける方法を
内断熱工法と呼び、施工性の良さなどからこちらの方が圧倒的普及してます。
しかし、外断熱工法は近年環境上の利点などから徐々に普及してきています。
尚、木造住宅において通常用いられるのは柱梁の間に断熱材を充填させる充填
断熱工法ですが、柱梁の外側を断熱材で包み込む外張り断熱工法が注目されて
います。この工法はコンクリート等の熱容量による効果が見込めないため、外
断熱工法とは別の工法と考えられているので注意が必要です。ただし、外張り
断熱工法であっても断熱の気密性連続性の確保、躯体内結露の防止、壁体内の
配線配管の融通性などの効果があります。
内断熱工法と比較した外断熱工法の主な利点は
1.断熱材が外壁の外側にあるため、室内側の熱容量の高いコンクリートが室内
の温度に追従し熱を蓄えてくれるので冷暖房効率が良くなります。空調を止め
ても急激に室温が変化しないため体調が良くなったという話も聞きます。
2.コンクリートが外気に直接さらされていないために、外気変動による膨張収
縮が少なく耐久性の向上が期待できます。
3.室内側に結露が発生しにくくなりカビの発生等が押さえられます。
4.各室の温度が安定しているため、ヒートショック現象が起こりにくくなりま
す。
多くの利点がありますが、内断熱は施工上の問題や室内空間が狭くなるために
断熱材の厚さが制限されることが多く、外断熱の方が断熱材の厚みが確保され
ていることが多いと思います。注意しなければならないのは、上記の効果は外
断熱特有のものではありますが、その程度に関しては断熱材の厚みによって左
右されることもあるので、工法対効果のみに注目せずに仕様対効果にも注目す
ることが大切です。
外断熱工法の問題点は内断熱工法と比較して建物全体の工事費が2割ほど高く
なること、バルコニーなど建物本体から飛び出した部分周囲の断熱がしにくい
こと、外壁廻りの断熱材及び仕上材の耐力の確保などが上げられます。特に柔
らかいものが建物の外側に来ることから断熱材廻りの耐力について不安視され
ることが多いと思います。様々な工法が開発されていますので、よく検討して
選択する必要があります。
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【編 集】池澤 雅弘 masahiro ikezawa
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